よくある局面

Edaxのbookを整備しようと思い立ったのですが、どんな局面をbookに収録すべきか考えました。まずは評価値0とかプラスマイナス2くらいの引き分けに近い進行ですが、それ以外にもよく打たれる局面は入れておいた方が良いのではないかと思いました(よく打たれる局面のほとんどは引き分けに近い進行だとは思いますが)。

そこで、実際に打たれている局面はどう偏っているのか興味が湧いて調べてみました。

理論値

まず、そもそもオセロで理論上考えられる局面はどれだけあるかですが、Edaxのcount positionsコマンドで出力することができます。

 discs       nodes         total            time   speed
----------------------------------------------------------
   4,            1,            1,        0:00.000,    1.0 kN/s
   5,            1,            2,        0:00.000,    2.0 kN/s
   6,            3,            5,        0:00.000,    5.0 kN/s
   7,           14,           19,        0:00.000,   19.0 kN/s
   8,           60,           79,        0:00.001,  39.50  kN/s
   9,          322,          401,        0:00.001,  200.5  kN/s
  10,         1773,         2174,        0:00.001,  1.087  MN/s
  11,        10649,        12823,        0:00.006,  1.832  MN/s
  12,        67245,        80068,        0:00.034,  2.288  MN/s
  13,       434029,       514097,        0:00.243,  2.107  MN/s
  14,      2958586,      3472683,        0:01.902,  1.825  MN/s
  15,     19786627,     23259310,        0:19.175,  1.213  MN/s
  16,    137642461,    160901771,        4:00.405,  669.3  kN/s

0手目(石数=4)は当然1通り、1手目は全て対称形なので実質1通り、2手目は縦取り・斜め取り・並び取りの3通り、といった具合で、12手目(石数=16)になると理論上は約1億3764万通りの局面の可能性があるようです。時間がかかるので、計算はこの辺りまでにしておきました。

実際に出現する局面

今回は理論上の局面数ではなく、実際にどれくらいの局面が現れるのかを調べてみたいと思います。使用する棋譜は2018年までのWTHORの中で人間が打ったと思われる棋譜86338試合分を使用しました。

これらの86338試合分棋譜で、対称形を全て同一視して出現回数を手数別にカウントしてみました。結果は以下の通りとなりました。

 mv       #pos
---------------
 0           1
 1           1
 2           3
 3          14
 4          59
 5         250
 6         670
 7        1609
 8        3294
 9        6054
10        9776
11       14470
12       20307
13       26718
14       33439
15       40233
16       46722
17       52779
18       58240
19       63096
20       67422
21       70921
22       73827
23       76236
24       78281
25       79897
26       81277
27       82380
28       83267
29       83960
30       84535
31       84928
32       85246
33       85486
34       85682
35       85812
36       85925
37       86006
38       86071
39       86113
40       86139
41       86145
42       86167
43       86170
44       86158
45       86103
46       86066
47       86007
48       85922
49       85856
50       85783
51       85694
52       85599
53       85552
54       85478
55       85394
56       85292
57       85165
58       84916
59       84380
60       80763

理論値と比較すると、3手目までは全てのバリエーションが登場しており、4手目は1つだけ打たれていない局面が存在するようです。5手目は322局面中250局面、6手目は1773局面中670局面で、この時点で半分以上登場していない局面になっています。そして20手目には67422通り、30手目には84535通り、40手目には86139となっており、ここまで来ると86338試合のほとんどが異なる進行になっていることがわかります。

最後のあたりで場合の数が少し減っているのは、空きマスが残って終了した棋譜が含まれていて局面がカウントされていなかったり、全滅やそれに近い棋譜で同一局面にたどり着いた棋譜が一定数あったためと思われます。

ある程度打たれる局面

上記の結果から、30〜40手目くらいからほとんどの試合で異なる進行になっていることがわかりました。では、何試合も登場する局面というのはどれくらいあるのでしょうか?今回は86338試合の0.01%に当たる9試合以上登場した局面がどれくらいあるのかをカウントしてみました。

左から手数、9試合以上登場した局面が占める試合数、局面数です。例えば、4手目時点では9試合以上で登場した局面は44局面あり、86268試合がこれらの局面で進行しているという意味です。つまり、0.01%以上出現しそうな局面を暗記しようとすると#posの数だけ暗記が必要となり、86338試合中sumの分だけがカバーできることになります。

mv     sum     #pos
--------------------
 0    86338       1
 1    86338       1
 2    86338       3
 3    86338      14
 4    86268      44
 5    85934     105
 6    85217     208
 7    83580     357
 8    80750     561
 9    76386     726
10    71057     906
11    64451    1039
12    56543    1101
13    48918    1102
14    41399    1038
15    34133     919
16    27970     811
17    22774     718
18    17833     614
19    13972     509
20    10763     413
21     8415     315
22     6525     261
23     5028     217
24     3685     165
25     2724     123
26     1958     102
27     1385      78
28      940      55
29      698      49
30      472      34
31      318      25
32      179      15
33      127      10
34       71       5
35       43       3
36       41       3
37       38       3
38       38       3
39       13       1
40       13       1
41       13       1
42       12       1
43        0       0
44        0       0
45        0       0
46        0       0
47        0       0
48        9       1
49        9       1
50        9       1
51        9       1
52        9       1
53        9       1
54        9       1
55        9       1
56        9       1
57        0       0
58       25       2
59       62       3
60      228       9

11〜14手目あたりが局面のバリエーションが最も多く約1000局面という結果になりました。それより前ではバリエーションがそこまで多くならず、それ以降ではバラけすぎて0.01%を占めるような進行が減っているということでしょう。

30手目あたりでは局面数は2桁前半となり、39手目で1局面になり、43手目には1局面もなくなってしまいます。しかし面白いことに48手目に1局面復活しています。複数の進行が同一局面に合流したということでしょうか。1局面は56手目まで続くのできっと有名なドロー進行なのでしょう。そしておそらく57手目に分岐して0局面になってしまいますが、最後の3手は全滅やそれに近い局面が同一局面として複数出現したものと思われます。

ここまで調べてきて、各手数で最も頻繁に現れる局面はどんな局面だろうという興味が湧いてきました。最初は手数ごとに最頻の局面を調べていたのですが、面白いのでトップ5に広げて調べてみました。以下、結果を発表します。

1手目

1手目

1手目は当然1通りしかありません。盤面はf5進行で表示することにします。

2手目

2手目

体感的に予想通りではありますが、縦取り、斜め取り、並び取りの順になりました。並び取りは1%強程度のようです。

3手目

3手目

縦取りは3手目で分岐を迎えるので首位から脱落し、斜め取りが首位に出ました。縦系は虎・兎・猫の順で2〜4位につけています。並び取りからネズミに進む進行が、縦や斜めのマイナーな進行よりも多いようです。

4手目

4手目

斜め取り、虎、兎、猫はそのまま順位をキープしています。5位はネズミを蹴落として龍定石が獲得しました。斜め取りは次が分岐点なので、展開が注目されます。

5手目

5手目

5手目はやはり分岐を迎えた斜め取りが脱落し、虎、兎が1位2位となりました。3〜5位は斜め取りから牛、飛び出し(闘牛)、蛇となりました。

6手目

6手目

6手目は上位勢は変化がなく、虎、兎、牛、飛び出しからの典型的な進行が占めました。5位は猫系の坂口流が浮上してきました。

7手目

7手目

7手目は虎系の進行が分岐を迎えましたが、スティーブンソンが1位、虎大量方面が2位と、分岐しても上位を維持しました。以下は6手目同様、兎、牛、飛び出しの典型進行が続きます。虎分裂のあおりで、坂口流は脱落しました。

8手目

8手目

ここで兎のローズ進行が虎系の2進行をかわして1位に躍り出ました。虎大量が2位、スティーブンソンはコンポスとノーカンに分岐して3位4位となりました。5位は牛の快速船やヨットに向かう進行になりました。スティーブンソンの分裂により、飛び出しは脱落しました。

9手目

9手目

9手目は特に波乱はなく、8手目からの流れでローズ、虎大量、コンポス、ノーカン、快速船の進行になりました。

10手目

10手目

ローズは安定の1位キープ。ここで虎大量の分岐によりコンポスが2位に浮上しました。虎大量は分岐しましたが金魚、酉、FJTが3〜5位を占める強さを発揮し、斜め系はここでトップ5から姿を消しました。虎大量の3定石は僅差で、どれも人気のようです。

11手目

11手目

ここでローズはシャープローズとフラットローズに分岐して2位・3位へと脱落し、かわりにコンポスが1位に浮上してきました。虎大量系は変化の少ない酉が4位、金魚は5位に後退しました。

12手目

12手目

12手目はコンポスからF.A.T.ドローへと展開している進行が1位から2位へと順位を下げました。複数のドロー進行がある影響でしょうか。かわりにシャープローズが1位に浮上、3位はフラットローズがキープしました。酉と金魚は順位が入れ替わり、4位金魚、5位酉となりました。

13手目

13手目

13手目で有力な変化の少ないフラットローズが3位から1位に躍進しました。シャープローズは爲則ローズと呼ばれる進行で2位に残りました。コンポス系の進行はF.A.T.ドロー方面とシャープコンポス方面への分岐を迎えたため、F.A.T.ドロー方面の進行が5位で残り、金魚と酉が3位・4位に浮上しました。

14手目

14手目

1位はフラットローズのローテーション系進行がキープ。金魚が2位に順位を上げて、爲則ローズは3位に落ちました。4位はシャープローズのローテーション系の進行が圏外から浮上してきました。F.A.T.ドローは5位キープです。

15手目

15手目

15手目はフラットローズ、金魚、爲則ローズの1〜3位は波乱なく、F.A.T.ドローが5位から4位へと1つ順位を上げました。そして5位にはここまで姿を見せていなかった手塚システム進行が突然浮上してきました。

とりとめのない記事になってしまいましたが、今回はここで終わりにしたいと思います。トップ5については要望があれば続けてみたいと思います。

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  • 最終更新: 2019/08/25 21:55
  • by lavox